~熱風の果て~

観劇の記録

雷ヶ丘に雪が降る(ASSH)@シアターグリーンBIG TREE THEATER

【作・演出】まつだ壱岱

【出演】林明寛、小野賢章京本有加絲木建太染谷俊之、阿部直生、我善導、鳥越裕貴、西山丈也、鵜飼主水、下園愛弓、篠崎祐樹、柾木玲弥、花田俊、中村まい、丸山雷電、クシダ杏沙、工藤亜耶平川舞弥、安藤彩華、飯田卓也、土橋陽子
f:id:JoanUBARA:20170401203230j:plain
第14作、第15作に続いて、3回目の観劇となるASSH本公演。ネオフィクションエンターテイメントと銘打たれた時代劇風の作品で、日本の戦国時代、それも九州地方になぞらえた「火の国」がモデル。敵役の龍造寺道雪はもちろん龍造寺隆信立花道雪の名をあわせたものだし、主役の雷神、雷切も立花道雪にゆかりの設定だ。さらには「四天王」も龍造寺四天王からのインスピレーションと思われる。
「白キ肌ノケモノ」から入った己がASSH公演に期待するものといえば、本格的な激しい殺陣、アウトロー側からの視点を主に置いた悲哀、温かな人情の3つが主なもの。今回は、2点目、3点目はやや弱かったように思う。
土蜘蛛、ジョーカーと、ただの悪役で終わらない、感情移入のできる敵役の存在があった前作、前々作と違って、今回の龍造寺道雪は単なる外道。一方、主役の雷神側は結束して敵に当たればよく、分かりやすい善悪二元の対立の図式となっていた。個人的にはここに捻りが感じられるかというのが重要なポイントなので、龍造寺が主役側のひとり、火神カグツチの父の仇という設定で、その道が塞がれてしまったときは、正直落胆した。敵側の四天王は敵としての個性が強く、それぞれ主役側にも劣らない魅力はあったものの、斬られるべき敵としての役割を大きく踏み越えられなかったのは惜しまれる。ただの外道に仕えさせておくのはもったいないくらいなのだが、何故その外道に仕えているのかというところが明らかになるシーンはなかった。アクション女優・下園さんはさすがの身のこなし。女性のアクション、殺陣というのは見ごたえがある。
主人公側の人間のつながり、そこにこうして存在している理由、といった前提となる設定を理解し、物語に共感するベースをつくるための導入部が不足していたのも惜しまれる。登場人物を絞るか、殺陣を削るか、脚本を長くするか・・・今一歩の惜しさが満載だっただけに、余計に残念な感じも抱いてしまった。
主人公側はイケメンパラダイスすぎ。イケメンは嫌いではないけど、イケメンキャスト目当ての女性客の笑いのツボがいまいち分からないのさ。それでいてクライマックスでは大泣きして・・・喜怒哀楽に鈍い己としては何というか、うらやましい。MOSHのときは笑いのツボが全く分からない男性客もいたけど。せっかくのASSH本公演なんだから、ASSH所属の俳優さんたちもメインで使ってほしい。
フライヤーでは、どう見ても我善導氏がボスなので、どんでん返しもネタバレ気味。龍造寺が影武者だったと分かる前は、ただの僧だったのかとも思ったので、劇中では成功していた。あと、影武者を斬るのは、クシダさん演じる櫛名の役目にしてほしかったな。そうすれば巫女軍団にもうひと花を添えられたと思う。
主演の林明寛くん、準主演の小野賢章くんは、ともに昨年の「ポチっとな」に出演していた「ポチメン」。「ポチっとな」は良太郎くん・かまなつセットしか見ていないので、小野くんのことは初めて見た。本格的な殺陣ははじめてということだったが、そんなことを感じさせない、迫力のある刀さばきを見せていた。海神役の絲木くんのことは、絶対に見たことある顔だと思ったら、朗読劇「ロミオ×ロミオ」での「男だったら誰でもいいんだ」の「淫乱副会長」役だった。