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~熱風の果て~

観劇の記録

まなつの銀河に雪のふるほし(アリスインプロジェクト)@六行会ホール

演劇 演劇-2012年
【脚本】麻草郁、【演出】松本陽一

【出演】内田眞由美斉藤雅子広村美つ美大浦育子時田愛梨船岡咲中西悠綺下垣真香青木ゆり亜、吉村瑠莉、宇佐美あいり、さいとう光恵、山田天衣、望月るな、岸田恵里子、今野杏南麻生かな、篠原ゆり、新田夏鈴稲森美優、小花、高橋明日香、中村葵川村ゆきえ
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一昨年の10月、「アリスインデッドリースクール」でアリスインプロジェクト発祥の地となった六行会ホール。大小の会場で公演を重ねるこのプロジェクトで、「本公演」と呼べる大規模なものは、昨夏の「ライン」以来3作目となる。いつもは乗り換えを嫌って大崎駅から徒歩で向かう会場だが、土曜日ははじめて最寄駅である新馬場駅を利用。原田里佳子たんらチアチア軍団に追い抜かれながらホールに到着。なお、「オリメン」であるまりやんぬも別の日に六行会ホールを訪れた模様。
個人的には余り相性がよいとは言えない、麻草・松本ライン。このプロジェクトに関しては、深く心に残った「アリスインデッドリースクール」を超える作品には現時点で出会えていない。麻草氏がハイペースで脚本を書き続けることの無理も出ていると思う。柔軟に外部の気鋭の劇団とのコラボも行っているのはよいところで、バランスを保って、演劇としての質を保った作品を送り続けてほしいと願う。
今回のストーリーは、設定上の謎が多く、掘り下げ不足で生かしきれていないところもある。キーワードの「データスフィア」と「グレイ・グー」の全貌、データスフィアの案内人であるアンナの立ち位置、クローンたちの生と死と世代交代、数万年もの間繰り返す日常を終わらせない原動力、ネコと人間のハイブリッドが生まれ維持される意味、ロボットたちの学習の有無、地球外文明との交信がもたらすもの・・・枚挙に暇がない。これらを全て解決しようとすれば、それこそ「ロボット」並みの上演時間が必要だろうが、短い時間の中であっても、もう少し上手く使えた気もする。せめて、アンナが何故忌み嫌われてもなお人間側に寄り添おうとするのかといったところは見せてほしかった。その、アンナを演じていた小花たん、サブリーダーを務めていた「ホシカゲ」を脱退していたとか。確かに「歌劇団」と言いながら公演を打てていない状況だったから仕方ないとも思う。
掘り下げ不足は、ラストの高揚感にも影響する。うっちー演じる奏を宇宙に送り出したいという思いを共有することができればより深く物語の世界に没入できるのだが、残念ながら舞台の設定と台詞の中では、そこまで到達することができなかった。最後の「こちらは地球です」という交信の場面は、竹内美宥たん主演の「もしもし星」と世界観的にも近いかな。
主演のうっちーにとっては、実質的な初舞台。「AKB歌劇団」では、ビーチボール遊びと「ほねほね」くらいの見せ場だったからね。滑舌に不安のある彼女、しかも周りは経験も豊富な面々が多いなかで、主役を勤め上げることができるのか心配もしたが、無為に4年の月日を過ごしてはいない。台詞の聞き取りやすさ、細かく表情を使った感情の表現といったものは、読書に勤しんだり、公演でもゆっくり聞き取りやすく注意して喋るように努めたりしていたことの積み重ねの成果でもある。成長を実感できた彼女にとって、大きな自信になる舞台だった。
メインキャストは実力者ぞろい。うっちーと同じくらいの背丈で真面目で感情表現が苦手な秀才を演じていたのが、この舞台ではじめてその名を知った斉藤まぁこたん。普段の自分とは全く違うという不器用で凛々しいキャラクターを如才なく演じていた。「空色ドロップ」に続いての舞台出演となり、公演期間中に19歳になった船岡咲たんは、豪放なところもある決断力に富む子の役。ちょっとお行儀の悪い仕草も、彼女が演じるとどこか上品に。役とイメージの違う子が演じるというのも面白いものだ。
GGR新アシスタントとして、レッズサポの間では圧倒的な知名度を誇るとっきー。己は残念ながら慈英蘭時代を最後にテレ玉視聴環境を失ってしまったのでGGRを見ることはできないが、その素人離れした落ち着きと司会者としての力量は驚きをもって迎えられている。舞台上の演技も堂々としたもの。19歳にしてロボット教師という難しい役を難なくこなし、気品と威厳と貫禄を遺憾なく発揮していた。とっきーは底の測れない才能の持ち主であることは疑いない。
ダブルキャストで目に付いたのが、あひる口と下ぶくれの顔が愛嬌たっぷりなチアチア悠綺たん。チアチアは楽曲が刺さりさえすれば見に行ってみようと思うこともありそうだが、まだその時は訪れていない。悠綺たんとダブルキャストだった真香たんは9年ぶりの舞台とか。彼女のことを見たのは6年半ぶりだったが、己の知る彼女のイメージとはだいぶ変わっていた。二人が演じた弥生役、同じ台本でも性格や奏との距離感が全く異なっていた。これもダブルキャストの面白さだ。
三等兵役の麻生かなたんは、福井から上京してきたばかりとか。16歳とは思えない幼さで、子供役を元気に演じていた。
千秋楽の楽しみのひとつがキャストの挨拶。涙で舞台に懸けた想いが測れるわけではないにせよ、やはり涙を見せられると共感するのが人情というもの。「パラダイスロスト」の千秋楽挨拶での号泣ぶりが印象に残っていた望月るなたんは今回もやはり涙を抑えきれず。「ノエルサンドレ」以来2回目の舞台となるさいとう光恵たんも泣きながら「ん?」を繰り返して笑いも誘いながらの挨拶となっていた。
アリスインではおなじみの終演後の握手会イベントに初参加。うっちーに加え、お目当ては「ハイスクールミレニアム」の前から密かに注目し、写真は買ったりしていた、マルシア三等兵役でダブルキャストで出演の篠原ゆりたん。伝えたいこと伝えて、聞きたいこと聞いて。ゆりまるは、新顔に対して、ハキハキと素直に愛想よくたたみかけ、周囲の会話を除けるためには自然と顔も近くなる。この期に及んで新しい世界を見てしまった。