~熱風の果て~

観劇の記録

空色ドロップ(Flying Trip)@中野ザ・ポケット

【脚本・演出】春間伸一

【出演】内田理央黒田有彩フォンチー、栞菜、齊藤夢愛梨里杏倉田瑠夏関根優那井上マー大竹浩一、藤井雅貴、重山邦輝、KEN、船岡咲麻友美、上林英代、新田夏鈴吉木りさ
f:id:JoanUBARA:20170401202412j:plain
「落下ガール」、「深愛」に続くFlying Trip第3弾は、戦時中が舞台。今回もまたおなじみのメンバーが多く揃った。擬似劇団的な継続性によって、キャストたちの成長も見守れることもこのプロジェクトの良いところ。いつものメンバーでも、ぬるいというわけではなく、今回も本番近くになってのキャスト交替があったり、難しい役に必死に立ち向かい自ら成長を感じたり、成人式を諦めてこの舞台の稽古に懸けたりと、温かさと厳しさが同居する空気がある。栞菜たんは、男性陣にも女性陣にも脚本家にもカンチョーしまくって親睦を図ってるって・・・何というか素晴らしい。
齊藤夢愛たんを見るのは、「アリスインデッドリースクール」のヤンキー・紅島さん以来2回目ということで、ヤンキーのイメージしかなかったが、今回は姉御肌的な性格ながらも女性らしい魅力がふんだんに感じられ、その差に驚かされた。
特攻隊として不帰の旅へ向かう男たちと、それを見送る旅館で働く女たちの姿を描く中に、生と死、人生を問い直す重い作品となった。とはいえ、日常の何気ない会話を紡ぐことに長けている春間さんなので、前半ではコメディ的な要素もあったが、今回は、それが後半の悲壮感との対比で描かれる何気ない幸福であるところに大きな意味があった。戦争の描き方としては極めて正攻法で目新しさはないのだが、そこは脚本家の自信の表れであるのかもしれない。
今回はこのシリーズではじめて男性陣がキャスティングされた。劇に深みを持たせるためには、やはり男性陣がいた方が自然だ。女性陣より目立たないように・・・と演技にも気を遣いながらの演技だったらしいが、ほどよい存在感で舞台を引き締めていた。
フォンちゃんの「谷崎潤」という谷崎神からとった役名を見て高まっていたら、女性陣の役名は樋口、三島、石川・・・とみんな文人由来。自殺願望のある「太宰さん」まで登場していた。
終戦に向かっての時の経過の中で、はっきりと変わるのが、太宰さんがどんどん小綺麗になるくらいで、旅館の従業員たちはずっと洋装のままというのは、1945年という時代からすると違和感があった。女性はモンペにしろ、兵隊は坊主にしろとは言わないまでも、多少なりとも「変化」があった方がよかったな。
千秋楽の「お約束」で春間さんがくろありたんに引っ張られて舞台に登場。まみりんメガネで顔を隠した「落下ガール」、フォンチー写真集で顔を隠した「深愛」では一瞬で舞台から消えた春間さんも成長中?今回は大きな声でキャストを称えるとともに、春に予定される次回作への意欲を大きな声で語ってから去っていった。千秋楽挨拶を締めようとするところで、不意に「今すごくトイレ行きたい」と言ってしまう座長の理央たんは大物だ。