~熱風の果て~

観劇の記録

VAMPIRE HUNTER(BLAM!!!)@笹塚ファクトリー(2011.6)

【作・演出】藤本浩多郎

【出演】北村悠、山沖勇輝、栞菜、神谷光桜野裕己、田井中茉莉亜小泉麻耶吹田早哉佳、佐藤友咲、武田烈、白水萌生、野中裕介、安達雅哉、横山善之、中村美香、東野善典、富田千尋、川崎誠司、馬渡直子
f:id:JoanUBARA:20170312230026j:plain
観劇した畑澤監督のブログで上演中であることを知ったこの舞台。ゲネプロにはまりやんぬが訪れていた模様。畑澤監督といえば、ともちゃん主演の映画「時空警察ヴェッカーDNS」の監督。昨年の「Alice in Deadly School」を見ていた監督に「やっと見つけた」と見出され、映画の撮影でも「天才少女」と絶賛される惚れられぶりのともちゃん。AKBは、もっとこういう形の評価をされるメンバーが出てこないと面白くない。
まりやんぬの「努力しないで出世する方法」で本来は足を踏み入れているべきだった笹塚ファクトリーに初入場。舞台上は奥行きと高低差のあるスケールの大きなセットがつくられており、開演前から期待感が高まる。不協和音的なコーラスと共に暗転し、舞台の幕が開いた。中村美香たんの殺陣から始まったので、女の子が主役だったのかと思っていたら、美香たんは主人公ルキスオルトスの少年時代で、すぐに北村くんにバトンタッチ。
簡単にストーリーを紹介すると、ルキスオルトスの母がルキスオルトスに殺され、アドニスがアウデンティアに殺され、ベアティテゥードがノワルーナに殺され、フェデリータがサンクティオに殺され、ベリオクルスがアウデンティアに殺され、スライサーがエクイタートスに殺され、ボブがエクイタートスに殺され、フリードリッヒ3世がエクイタートスに殺され、グレーシーがエクイタートスに殺され、トムがエクイタートスに殺され、レオンがアウデンティアに殺され、アウデンティアがエクイタートスに殺され、エクイタートスがルキスオストスに殺され、ノワルーナがウェスペリティリオーに殺され、ウェスペリティリオーがルキスオストスに殺され、サンクティオがルキスオストスに殺される物語。
戦闘シーンをふんだんに盛り込みながら、途中休憩をはさんで上演時間は3時間近く。ところどころに笑いを差し挟む努力もしてあるし、畑澤監督が言っていたように、アクションに音をアテるタイミングが絶妙で、殺陣の迫力も十分で飽きさせなかった。2部構成で、後半は「我らがおっきー」こと山沖くん演じる悪の華・アウデンティアの、どうしようもない奴なのに爽やかという悪役ぶりが新たな風を吹き込む。ライバルの刃を自ら体内に押し貫き通し、ライバルの肩をポンと叩いてから倒れるアウデンティアは、「新撰組!」の佐藤浩市演じた芹沢鴨の最期みたいでカッコヨス。アウデンティアのライバルで正義を具現化したようなエクイタートスの影が薄くなってしまうほどだ。永遠の生命を持つはずの「血族」の登場人物たちが自ら亡びを望むところなんかも、芹沢との共通点を感じた。
血族の王と女王の迫力は凄まじいものがあったし、悪役の一人ひとりにも個性があって、つい死んでほしくないと思ってしまった。栞菜たん演じる闇の王女ベアティトゥードが馬渡直子さん演じる闇の女王ノワルーナに戦いを挑んで殺されて以降、終盤は舞台上に死屍累々。最後も夜明けという名を持つルキスオルトスが夜明けは訪れないと狂ったように高笑いをし、希望の欠片も残さずに悲劇は終幕。この希望のなさがカタルシスを生み出す。ストーリーや設定には粗はあったかもしれないが、思いがけず記憶に残るいい舞台を見させてもらった。