~熱風の果て~

観劇の記録

AKB48劇場5周年特別記念公演

帰り道、ひたすら繰り返し思い浮かんでくるのは彼女の名前。会えるかもしれないという淡い期待は空しく消えた4周年記念イベントから1年、武道館の2階席から遠く見つめた卒業コンサートから1年4か月、最後に掌を重ねてから1年5か月、最後にステージで歌い踊る姿を見てから2年。この月日、美香ちぃのことを忘れたことはなかったが、二度と会うことはないだろうとどこかで諦めてしまっていた。
身体をぼろぼろにしながら限界を遥かに超える力を振り絞って演じ続けたパジャマドライブ公演。そして待っていた挫折。彼女のことは、この世のどこかで元気で笑顔で暮らしていればいいと思っていた。
チームAの「PARTYが始まるよ」に卒業生たちの姿を見て、心は大きく波立った。チームKの「青春ガールズ」が終わって、予想通り円陣、美香ちぃは・・・やっぱりいないか、と落胆を恐れる余り、己は早々と誤認を事実とみなしてしまった。その重大な過ちに気付いたのは、「スポットライトが・・・」で始まる2番に入ってから。黒髪を長く伸ばした姿はAKB時代とは異なるものの、チャームポイントのあの猫目とツンデレフェイスは間違いなく美香ちぃ!テーピングもサポーターもなしに、「初日」を楽しそうに演じている!もう夢にも見ることはないと思えた光景が現実に眼前にあるということが信じられなかった。こうして思いがけない再会を果たしたのだった。
12月8日といえば、なっつみぃから紅白饅頭をもらった2007年、優子たむから紅白饅頭をもらった2009年のことがあるので、もしかしたら今年は、と期待したが、終演後は約80名の出演メンバーとの超蛇行ハイタッチ会。半ば心ここにあらずという状態で高速のまま折り返すこと3度、懐かしい顔が次々と見えてくる中に、美香ちぃもいた。一瞬時間が止まったような感覚に陥ったが、実際には3〜4秒ほど・・・。忘れられているだろうかという心配は無用だった。声をかけた瞬間、顔を大きく歪め小刻みに飛び跳ねた彼女の姿は己の記憶から消えることはないだろう。
AKBに関して、己は現在、過去、未来のどこに立脚しているのかという問いに対し、今日の記念公演は「過去」という答えを厳然と突きつけたが、過去の忘れ物をひとつ取り戻すことができた。今日の公演に参加できたのも、美香ちぃの導き・・・と、劇場でのポジショニングを思い返しても、そんな風に思えた。
チームA「PARTYが始まるよ」は、卒業生からの参加は、渡邊しほりん、のぞふぃす、花、ひぃちゃん、梨紗、Michiru、あゆ姉。逆に不参加は、MCのお姉さん、加弥乃、りなてぃん、まいまい、おーいぇ。A1公演上演期間中は劇場に足を踏み入れたことはないので、本来であれば感慨にふける資格はない己ではあるが、卒業生は懐かしい顔には違いない。それに、「PARTY」は、K1公演で衝撃のAKBファーストコンタクトをもたらした曲でもあり、自然に気持ちが高まった。自己紹介では、甘えん坊の泣き虫キャラに戻ったみぃちゃんが屈託のない表情で涙を流していた。
そして、次はチームKによる「青春ガールズ」。卒業生からの参加は、優ちゃん、かおりん、そしてTAKADA。3人とも変わってないなぁ。欠席は、なるる、えれぴょん、あーや。AKBに対して己がいちばん熱かったあの時代・・・、高熱を発するあの頃の記憶と感覚の欠片は身体の中に確かに残っていた。ただ、A、Bと比べると、今日のチームKは曲も自己紹介もあっさりと終わってしまった印象。もう少しチーム全体が絡まるようなMCが聞きたかった。せっかく優ちゃんがいるのだから、劇団NYの復活とかやってほしかったな。
3番目は、当然チームB「初日」。美香ちぃに加え、まつゆきとポムが登場。なるっぺ、ぐっさんが不在。B3公演期間中に入れ替わりがあったメンバーでは、きくぢ、春香姫、萌乃たんが参加し、さっしー、ともちゃんは不参加。やっぱりあの頃と今とでは、舞台を見る感覚が全然違う。楽しいだけではなく夢を見ることができた時代を、美香ちぃと一緒に腕を振りながら思い出し、少し心に隙間風が吹いた気がした。
3チーム揃っての劇場の歴史を振り返る楽曲の後、アンコールを挟んでニューシングルに収録の6曲が披露された。一気に3年〜5年の月日が通り過ぎていく。そして、現在、過去、未来が一堂に会した今日の公演で、現在残っている9期生の全員昇格が発表された。苦楽を共にしてきたゆいたんが号泣する姿が印象に残った。もっとも、8名が新加入との今日の発表だけでは、今後のチーム像は予断を許さない。
グランドフィナーレは全員集合での「桜の花びらたち」。80余名で演じる永遠のAKBクラシックは、花道をいっぱいに使っても納まり切らず、美香ちぃなどはステージ下で演じることとなった。チームBでは泣かないのがルールと自己紹介で強がった美香ちぃも、ここは感動に涙ぐむ場面も見えた。その姿に平常心を失いかけていた己にとってもこれがある意味グランドフィナーレ。アディショナルタイムは残っているかもしれないが、10周年イベントは既に参加しないことが確定している。今日という日以上の区切りというのは、優子たむの卒業がどういう形で訪れるのかというところはあるが、今後体験することはないかもしれない。それを美香ちぃと同じ場で経験することができたというのは、非常に意味のあることだった。