~熱風の果て~

観劇の記録

雨のち晴れ(劇団シアターザロケッツ)@テアトルBONBON

【脚本・演出】荒木太朗

【出演】佐藤弘樹、北澤早紀、毎熊宏介、狩野健斗、大橋篤、浅倉一男、森岡宏治、天野きょうじ、美鈴響子、堀木さな
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何度か再演をされていて、2年前に岡田彩花さんが初舞台を踏んだ時に観劇したことがある演目。
天野さんと美鈴さんの二人はそのときも出演していたキャストで、主演の二人を含め、その他は新たなキャスティングとなっていた。
佐藤弘樹さんの陽介は、若宮さんが江戸っ子気質のきっぷの良さを前面に出していたのと比較すると、より内向的で悩みが深い部分を掘り下げた演じ方だった。晴美の過去の姿を思い浮かべる場面での抜け殻ぶりや、晴美への思いを一旦は断ち切ろうとしながらも正直に弱みを見せる部分のめめしさなどは、そんなキャラクターづくりが集約された場面だった。
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私の娘でいて欲しい(劇団皇帝ケチャップ)@浅草九劇

【作・演出】吉岡克眞

【出演】森岡悠、椚まいか、西村由花、藤原澪、齋藤雅樹、佐々木みう、渡部慎、細田こはる、一ノ瀬ふみか、久野友子、鍋島瑠衣
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これが200作品目の観劇。
昨年のボブジャックシアター公演で、透明感あふれる演技を見せていて気になった森岡悠さんが主演を務めるということで見に行った。
登場人物たちの個性の作り方がいかにも舞台的で鼻に付くところが多く、姉を含めた周りの大人たちの勝手さと森岡悠さんが演じた皐月との距離感が埋まったとは感じられないまま、収束を迎えたことに、つっかえたものを感じながら劇場を後にした。森岡悠さんは、涙を流しながらの熱演だったが・・・
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世界の底にて君を待つ(劇団ぱすてるからっと)@シアターグリーンBOX in BOX Theater

【演出】佐藤颯【脚本】久留里狗

【出演】陽菜菜々羽、飯田ゆか、結城かえで、吉岡臣、久下元気、久留里狗、杉本莉愛、磯崎みずほ、花桐伊織、須藤利恵、五十嵐睦美、遠藤えりか、半田佳樹、西島梨央、うさみみ、いわみりかこ、村田果奈美
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飯田ゆかさんがW主演で出演したこの舞台。これまで、3つの作品で舞台で演じる彼女に会ってきたが、「飯田ゆか」「いいだゆか」「ゆか」と、そのたびに変わってきた名前を振り返るだけでも、平坦ではなかった道のりが偲ばれる。昨年11月、芸能活動はこれ限りという思いを抱きながら出演した復帰作「君の夢とボクの願い」を経て、原点である「飯田ゆか」の名前に戻って、今回のW主演へと活動はつながっていったのだった。
ゆかさんの演技は、初日こそ演じたユニの個性を意識しすぎたのか、声が出ていない印象があったが、2日目から髪型を変えて演じ方にも調整を加えるなど、開幕した後もキャラクターを作り上げていった。2日目からのデコ出しの方が、コンビを組むマイとのビジュアルの対比が明らかになるし、ユニの純粋さや意志の強さ、理知的な面などもよりよく表せていたように思った。ビジュアル面だけでなく、持ち前のクリスタルボイスもユニにぴったりはまっていたと思う。千秋楽、「ユニ」から「飯田ゆか」に戻った途端に溢れてきた涙はとても美しかった。新たな縁をつないだ彼女の演技を、また見ることができる日を待っていたい。
作品の世界は、人類が一度滅んだ後、僅かに地底で生き残った研究者たちが再び地上で暮らせる人類をつくるための実験を繰り返している・・・というもの。希望と絶望が入り混じる中で、登場人物たちは自分の記憶や実在にすら確証が持てない状況に追い込まれていく。何が正しい選択なのか、どんな不確かな状況にあっても、自分の意思と価値観を持って行動していかなければいけないということが、「お前に内臓はあるか」という台詞に集約されていたのだと思う。多くの犠牲も生まれたが、それらも皆、自らの意思で何をなすべきか考えることの大切さを悟り、行動した結果のもの。変えたいという意思を持ちながら孤独と絶望の末に自分自身ではなく偽りの「神」の声にすがってしまった若草や、抜け殻のようになり意思を捨ててしまった春日も、自分を省みれば、単なる悪役・敗残者として見ることはできなかった。
空チームの4公演を見終わった後でも、全ての設定が理解できたとは言い難い。まず、若草と春日が開眼者たちを地上へ行くように誘導した理由は判然としないところがある。邪魔者を逃げ道のない袋小路に遠ざけておきたかっただけとも取れるし、綿向の調査結果によって地上の毒に9人が耐えられないことを確信したのかもしれないし、死んだ海を見せて絶望させることまで意図していたとも想像できる。それであれば、死んだ海を見て希望を新たにするラストシーンは、より美しく見える。
葛城と三國が時間を稼ごうとした意味はどこにあったのか。メルツの力がなければ富士たちには何も抵抗する術がなかった以上、それぞれに相応しい死に場所をと考えていたということなのか。それにしても、ドロとクズ、葛城と三國にはもう少し抵抗の見せ場があってもよかったように思うが、それすら与えられないのは、より絶望感を強めようという演出意図だったのだろうか。
反乱の動きを早くから察知していたメルツには、犠牲が発生する前に若草たちを止めることはできなかったのか。メルツたち3人が止まった時間の外にいるかのような演出は何だったのか。若草を撃った特別製の白い銃は、誰がいつ、何のために作り出したのか。・・・このあたりの疑問には、メルツの存在や能力を超常的なものと位置づけなければ、折り合いのつく仮説を考えるのはなかなか厳しい気がする。
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巫女ガール(Super Eccentric Girls)@CBGKシブゲキ!

【演出】大関真【脚本】木下半太

【出演】河西智美、兼田いぶき、花奈澪、小林れい、根岸愛、後藤紗亜弥、内藤もゆの、夏目愛海、立川ユカ子、木下桜、新貝紋加、山下愛実、小松玲菜、山﨑愛華、鈴木かぐや、松林篤美、馬屋原涼子、齋藤くれあ、樋口遥香、久下恵美
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所属の劇団員・岸谷氏がDJを務めていたラジオ番組「レディクラ」で名前を知ったのがかれこれ30年近く前になろうかというスーパーエキセントリックシアター。その老舗劇団から生まれたガールズ演劇企画の舞台を観劇。
主演は、ともーみこと河西智美さん。一時は毎日のようにあった彼女の姿を見る機会だが、何と今回、2012年の劇場公演以来7年ぶりだった。14歳のときに初めて会った彼女の27歳の演技を見るということに不思議な感じもしながら見ていたが、気が弱くて周りに合わせてしまいがちなお姉さん役を、相変わらずの可愛らしい声で、クネクネした感じで演じていた。一転して後半の闇堕ちシーンは低い声を響かせていた。
巫女たちの戦いは、神の力を憑依させるというもので、あいみんは能天気な女子高生から、布袋を憑依させて芭蕉扇を得物に戦う巫女さんに変身。女性だけのキャスティングながらも、しっかりと殺陣も見せてくれた。悪役だったけど、花奈澪さんが演じた稲葉の凛とした立ち姿は美しく、惚れ惚れとした。
心の隙間を衝かれて闇堕ちしてしまうという展開には、さほど目新しさがあったわけではないが、何事にも諦めないことの大切さや親の愛といったメッセージ性も織り込まれていた。悲劇的に終わるかと思われた終幕が意外な伏線が回収されてほのぼのと終わる作品だった。
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週刊少年てんぎょ(男〆天魚)@中野ザ・ポケット

【作・演出】井上テテ

【出演】長戸勝彦、平野勲人、藤江れいな、小笠原健、須藤茉麻、幸村吉也、古賀司照、宮澤翔、緒方和也、加藤葵、橋渡竜馬、氏家蓮、青柳伽奈、徒然みおれ
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昨冬の第5回公演「ろくでなし八犬伝」が、これまで見た作品の中でもトップクラスの満足度だった男〆天魚。それがあったので、今作は自分の中ではハードルは上がっていたが、やはり大満足の出来栄えだった。
漫画の中の世界と現実らしい世界の描写が行ったり来たりで、辻褄はしょっちゅう行方不明に。シーン転換ごとに、演じるキャラクターが変わればテンションも変わり、衣装も早着替え。ともすれば役者も観客を置いてけぼりにしていきかねないところだが、フライヤーの「FREE WORLD」ぶりがこれでもかと発揮されていて、さすがは男〆天魚。前作に比べればやや品がよくなってしまった印象だが、情けなくも微笑ましいおじさんパワーは健在。ベテラン勢と若手勢の力がミックスされて、テンポの良さと激しい動きや殺陣にも対応できるチームワークは、本番までしっかりと準備を積み重ねてきた証だった。狂言師居酒屋や突如挟まるダンスシーン、幸村さんの歌唱力が光る歌唱シーンなど、井上テテさんの奇想天外なアイデアとそれを舞台の上で表現できる役者陣が揃えば、2時間の楽しい時間はあっという間に感じられた。そんな物語も最後にナレーションが介入して、一本のキャンドルが残されるように静かに暖かく終演。少し不思議な感じのあった舞台セットや漫画の吹き出しやトーンを模した衣装も、終わってみれば合点がいった。
れいにゃんこと藤江れいなさんの出演作品は、2010年の初舞台から見てきた。間もなく25歳という年齢になりながら、天真爛漫で邪気を感じさせない透明感は今年も衰えるどころかますます強まっている。AKB時代から魅力的だった表情の豊かさは、舞台での演技で威力を発揮するし、手足の長さも生かした大胆なポーズなど、大きな演技を見せていた。辛い経験の記憶を抱えながら、それを強さに変えて前向きに生き、向こう見ずに真正面からぶつかっていく、けよ子のキャラクターは、れいにゃんの持つ芯の強さが投影されたようなところがあったし、静かに語るシーンではしっとりと、演技の新たな一面が現れていた。1年に1回と言わず、もっと舞台で見られる機会が増えてほしい。
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