~熱風の果て~

観劇の記録

破格ノ七人-7/stupid-(ベニバラ兎団)@下北沢B1

【演出】IZAM【脚本】川尻恵太

【出演】本川翔太、森丘崇、チョモLaラテ、IZAM、MALIA.、原さち穂、楠田敏之、日比博朋、白石朋也、小田切瑠衣、新川悠帆、飯田南織、谷茜子、平岡梨菜、井上翔、藤本裕
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ベニバラ兎団の演劇としては初観劇となった、4月に上演された「優しい電子回路」が質の良い作品だったこと、今回も引き続き川尻さんが脚本を担当すること、昨年見たu-you.companyの「ドールズハウス」に出ていた小田切さんや谷茜子さんが出演すること、そして何よりも題名の得体の知れない格好良さと魅力的な世界観に惹かれて、今作のチケットを購入した。
会場は、初入場となる下北沢の小劇場「B1」。薄暗く、狭い客席の前に二面舞台が形成され、舞台奥の幕の裏には楽隊が控え、開演前から独特の怪しげな雰囲気が漂う。劇中の音楽を生演奏で聴けるというのは、音楽家でもあるIZAMさんがプロデュースする劇団ならではのこだわりだ。血を分けた兄弟である二つの国の王子を演じた、森丘崇さんとチョモLaラテさんは、IZAMさんがプロデュースするバンドでボーカルを務めるという二人。劇中ではどおりで劇中歌で綺麗なハーモニーを響かせられたわけだ。役者は本業ではないながら、演技もなかなかしっかりしていたし、対照的なビジュアルとキャラクターが確立されていた。
コメディ色が意外と強いという事前情報もあったとおり、真面目なシーンでもちょいちょいと小ネタが挟まる。一歩間違えれば雰囲気ぶち壊しというところだが、迫力のある殺陣や個性的な役者陣の熱演ですぐにリカバーできるからこそ、小ネタが許される。馬の頭の模型を付けた棒切れにまたがるという、残念な移動方法が格好良く見えてしまうというのはずるい。それにしても、最後までブレずに、観客の涙を絞らせることが確実なクライマックスのひと言までネタにしてしまうというところには恐れ入った。
飯田南織さんの無念さ溢れる壮絶な最期や、愛する人たちを守るために自らを犠牲にした兄弟の復活など、いい場面が演じられた二面舞台のコーナーがやや見づらい席だったのが少し残念だったが、小劇場で観るにはかなり贅沢な作品だった。拍手を受け続けて終わらないカーテンコールの後は、役者全員とハイタッチ会という、どこかの劇場のような退場方法。たまにはこういうのもいい。20年前のブームで名前と赤髪の顔を記憶していただけで、演劇に携わっていることはつい最近まで知らなかったIZAMさんを前に、少しドキドキしてしまった。彼のさすがのとラスボス感、そしてお茶目な感じも醸し出す演技は見応えがあった。女王役のMALIA.さん、初舞台ながら貫禄があって、どんな人なのかと帰って経歴を見たら、佐藤優平選手と結婚をしていた方と知ってなるほどと納得した。
シアター711での次回作に加え、「破格ノ七人」の続編制作が早くも決定するなど、この夏以降も活発な活動が予定されているベニバラ兎団には今後も注目をしていきたい。
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すてきな三にんぐみ(爆走おとな小学生)@キンケロ・シアター

【演出】加藤光大【脚本】千歳まち

【出演】白石みずほ、葛城あさみ、石原美沙紀、辰巳シーナ野々宮ミカ、雛形羽衣、夏目愛海、長橋有沙、林千浪、宮下奏、相澤香純、朝比奈南伊藤みのり、倉田侑里茄、とよたかなみ、相良朱音、伊東みおな、江藤彩也香、千歳まち、小田あさ美、紗綾
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原作の絵本のストーリーは全く知らないので、舞台化に当たってどの程度の改変があったかは分からないが、純粋に舞台作品として見ると、辛めの評価にならざるを得ない。
「46億年ゼミ」では、壮大な時間軸を表現するために大きな舞台を必要とする理由は理解できたが、今作では、キンケロという大きめの劇場を使わなければできないような演出は見て取れなかった。3人組が子供たちを連れ出す過程を描くのに費やされた前半は登場人物が少数に限られるので、広い舞台の空間を持て余し気味に見えた。
舞台としては、中世ヨーロッパのような雰囲気ながら、義務教育があったり、警察機構が整備されていてスーツを着た女性捜査官がいたり、探偵が職業として成り立っていたりと、現実世界の特定の時代に当てはめることはできない。なぜ村に男性がいないのか、女性だけの舞台としてはそこの説明がないと不自然な感じを受ける。登場人物たちの派手な髪色も設定の統一感のなさを強めてしまった。
善悪二元論の打破は望むところだが、ストーリーをハッピーエンドに収束させるには、余りにも犠牲が大きい。これが絵本のとおりの過程であり結末なのであろうか。まず、夏目さん演じるカトリシアは和解の印としての尊い犠牲として理解できるが、それで十分ではなかったか。そのカトリシアの生命を尽き果てさせたニーナにも償いが必要であり、更にニーナを追い詰めた義母にも償いが必要であり・・・と血の償いの連鎖を描くのは子供向けの絵本としてというよりも、単純にストーリーとして安易だし、心地のよいものでもなく、カトリシアの犠牲の尊さに泥を塗られたような不快感があった。命を奪われるのが親子のペアというのも都合がよいし、4つもの命が失われてから、過ちに気づいてわだかまりを乗り越えて、生き残った者にすぐに笑顔すら見られる・・・という展開は、人間の感情として理解できるものではなかった。この展開であれば、村人たちが祀るべきは、3人組よりもカトリシアやニーナの方なのではないだろうか。また、取ってつけたように逮捕されたティファニーの義母は、善悪二元論の克服のために救いのない単純悪として描かれることに矛盾を感じた。
途中、物語が血の償いを求めていることに気づいたときには、部外者であり、家族もない流れ者である3人組が犠牲となるのかと思った。社会のしきたりやルールから外れたがゆえの言われなき代償を払うことで、彼らの悲しい生き様や社会の理不尽さを示すとともに和解にもっていくのかと思った。3人組は、フライヤーのイラストのような不気味さがほとんど見られず、最初から親しみやすさが強調されていたのも簡単に彼らの本質を明らかにしすぎだった。大人たちからは疎外されるべきもの、子供たちからは受け入れられるもの、というハーメルンの笛吹きのような二面性を見せるためには、無表情で口数も少ないという設定の方が、風貌とも合ってよかったのではないだろうか。
平和な村という設定に似合わない大人たちのどうしようもない心のいやしさの描き方は、あからさまに過ぎた。世間体や因習といった大人たちにとって正しいもの、守るべきものを、単につまらないものとしてではなくて守るべき理由のあるものとして説得力のある形で示したうえで、子供たちや3人組が純粋な心でその真実性に揺らぎを与えていく、という静かな心理劇が見たかった。
長橋さんが演じたジャンヌは、これも時代を映しているのか、トランスジェンダーという設定。演劇で取り上げられるのは初めて見た。LGBTと言えば、ゲイを愛すべき道化のように描くものと相場が決まっていたが、今後は描き方も変わっていくのだろう。
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アフィリア・サーガ ワンマンライブ@ディファ有明

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不世出のアイドルであり、その言葉や生き方に感銘させられることも多い、アフィリア・サーガのコヒメ・リト・プッチさんの卒業ライブに参加。
第一報を聞いたときには、これで舞台出演などの活躍の機会が増えるかも、と肯定的に捉えていた彼女の卒業だったが、勧告を受けての不本意な卒業であったことや、アイドル引退と同時に芸能界を去る覚悟でいることなどを知るにつけ、遣る瀬無さが勝っていった。これまでに彼女のことを見たのは、TIFアイドル横丁祭での合計50分にも満たない時間にすぎず、当然接触をしたこともなく、さらに彼女の願いとは違いこの先のアフィリアを応援する意思を持っているわけでもない自分には大事な卒業ライブに参加する資格はないものと思っていた。
そんな中で、遠征先のホテルの部屋で、チケットの売れ行きが芳しくない卒業ライブをどうすれば満員にできるか、隠し撮りまでしながら他の2人の卒業メンバーと本音で語り合うコヒメさんのツイキャスを見て、8年半に及んだ彼女のアイドル人生の最後の場に立ち会うべきではないかと変心。椅子席があればなおよかったが、「後方エリアチケット」という、ただその場にいて記憶と感覚に焼き付けるだけでよい自分にはお誂え向きのチケットを、満員にならないのならばと購入したのだった。
開演20分前からの呼び込みに応じて入場し、「非合理的かつ訂正不能な思い込み」のコヒメ卒業盤を購入してライブエリアの片隅へ。身長140センチのコヒメさんの顔を見るのは厳しいかと思っていたが、まずまず視界が確保できた。
初期の曲から時系列的にシングル曲とアルバム曲を混ぜながらの、40曲に及ぶ卒業ライブが始まった。アフィリアの曲の中で特に好きで、グループを知るきっかけにもなったシングル曲「メリディンの祈り」はもちろん、もう1曲、特に好きな曲である「聖なるwktkの星」もワンハーフながら演じられるなど、見たいと思っていた曲は全て演じてくれた。多くのメンバーの卒業を経てきたグループなので、卒業や別れをテーマにした曲も中盤から遠慮なく演じられる。アフィリアの曲を追いかけていたのは、今日のライブで言えば折り返し手前になるシングル「未来が私を待っている」まで。今日も改めて感じたが、これ以降の楽曲はアニメ主題歌も多く、ライブ向きを意識したような盛り上がり重視の路線が続く。前期の魔法ファンタジー路線を好んだ己にしてみれば、アフィリアが歌う必然性がないように感じてしまい、興味が失われていってしまったのだ。しかし後期の曲もステージ上で演じられるのを見ると、彼女たちの渾身の頑張りに心を打たれる。アンコール前まで着替え休憩もなく、ソロやユニットで誰かが休むということもなく、10人が一度もハケずに歌い踊るさまには、ここに来たことが間違いでなかったことを教えられた。
そしてアンコール後には、卒業する3人はドレス姿に着替えて登場。「My White Ribbon」を何故やらないのかと疑問に思っていたら、最後の最後に持ってくる心憎さ。予告通り、しんみりとしすぎることなくステージ上の歌と踊りでアイドル人生の全てを出し切るという、彼女たちらしさを貫いた卒業ライブだった。
再来週には、中目黒でコヒメさんとミクさんがダブル主演を務める舞台「マクベス狂走曲」が上演される。必要とされるなら、と迷いながらも出演を決めたコヒメさん。この舞台の成功が、彼女が芸能界に居続ける決断をするための最後の一押しとなることを願いたい。昨年の「リングのマクベス」の情報をキャッチできずに見逃してしまったのは痛恨だったが、今回は既にチケットを購入済みなので、しっかりと見届けたい。

Afilia Saga East メリディンの祈り Pv

アルキミコ(u-you.company)@TACCS1179

【演出】中山浩【脚本】すぎやまゆう

【出演】水野奈月、小田島渚、杉山夕、鷹村遊、伊集院友美、林由莉恵、木庭美咲、三品璃乃、ふくち笑也、結城かえで、徳永優羽、アイドル鳥越、海老沢茜、松田美咲、花川怜奈、月乃彩花、荒井芳美、小笠原佑花、木ノ本かいり、元澤めぐみ
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己が観劇生活に復帰する契機となった「ドールズハウス」を送り出した、杉山夕さん主宰の「u-you.company」の新作を観劇。名前を知っているキャストは「ドールズハウス」に出演していた杉山さんと木庭さん、徳永さん、月乃さん、林さんだけだったが、今回もきっと良質の演劇を見させてくれるはずと期待して、発売初日にはチケットを購入していた。その期待は外れることなく、終演後はDVDを予約してきた。
戦国の史実の歴史の流れを下敷きに、翻弄されながらも力強い女性たちの生き様、死に様が描かれる重厚な作品。家名を残すために親兄弟が敵味方となる道を選んだ主君のため、自らもまた掟に従って情を捨て、敵味方に分かれ、死に方を誤ることなく散っていく歩き巫女たち。一般の人間的な感覚から言えば、従わでもと思うような不条理な掟をひたすらに守る彼女たちが健気で痛々しい。同時に、掟を受け入れつつも端々から迸り出る人間的な感情が胸を打つ。安易に現代的な感情論に流すことなく、最期まで「歩き巫女」として生かし、死なせる演出を貫くことで、彼女たちの尊厳が保たれた。
昌幸や小松姫の家族愛は美しくはあるが、その裏で主君一家の想いを遂げさせるために、いとも簡単に投げ打たれていく命。素敵な殿方にめぐり合うことを夢見て、どんなタイプが好きかと、現代の女の子と変わらないような他愛もない話をしていた子が、次の瞬間には武器を手に取り、傷つき、自決をする。傷つけ合い、死に行く今わの際に発せられる言葉が、彼女たちの儚さをより増大させる。家族愛の美しさも主題のひとつではあるのだが、戦で親を殺されたといった設定の歩き巫女たちなので、余計に「生命の格差」といったものも感じて苦しくなった。
歩き巫女たちが戦う中で、舞台の中央で舞う小田島さん演じる竹林院。その舞姿が美しいだけ、戦いの悲劇との対比が浮き彫りになる。日本舞踊でも嗜んでいるのかと思って小田島さんのプロフィールを覗いたところ、踊りは踊りでも特技はフラダンス!衣装の着こなしや上品な立ち居振る舞いと物言いなど、すべての面で戦国の時代の女性を華麗に演じていた。ラストで小松姫から紐を贈られるというエピソードが「真田紐」につながるというあたり、考証がなかなか細かい。嫁入り前から「竹林院」と尼みたいな名前というのはいかがなものかと思ったが、彼女の実名は伝わっていないとのこと。姫と和子とで誕生の喜ばれ方が違うということに、小松姫が異を唱えるシーンがあったが、身分があったとしても、誰の子で誰の妻で誰の母かということのみが伝わるのがこの時代の女性たちだ。
初日を迎える前に、チケットは全公演完売。知らない出演者が多いので、パンフレットも買おうと思っていたが、土曜日の時点で、すでに売り切れとなってしまっていた。パンフレットそのものの商機だけでなく、出演者のことをより深く知ってもらえる機会も逃すことにもなるので、もったいない。もうひとつ、改善点としては前説。出演者によるカゲアナでよかったのではないかと思う。
次回のu-you.companyは、投票で圧倒的な支持を得た「ドールズハウス」の再演が早くも決定。場所は池袋のBIG TREE THEATER。全公演満席の実績を引っさげてとはいえ、初演が下北沢の小劇場だったことを考えれば、なかなか挑戦的だ。当然、出演者の入れ替えもあるだろうが、ヒロインを演じた「ドールズハウス」以来、再び休養の時間を迎えている、いいだゆかさんの復活の舞台となれば申し分はない。
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PLAYROOM(ピウス企画)@シアターKASSAI

【作・演出】広瀬格

【出演】桜木さやか、長谷川太郎増田裕生さいとう雅子、長橋有沙、亀井英樹、水崎綾、木村若菜、伊藤武雄

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シアターKASSAIで観る演劇は10作品目だが、ここで二面舞台をなす作品を見るのは初めて。廃墟の密室を表現した殺風景な舞台というか、何もない床。先ほどまで歩いていた空間が舞台となることで、客席と舞台の境界は曖昧になる。劇の舞台となる廃墟の位置はシアターKASSAI、登場人物たちは池袋周辺を移動する設定で、実際に出てくる地名の名前も場所もすぐにイメージできるということもあり、そこにも虚構の中のリアリティが感じられた。
空間を挟んで、近い距離で観客同士が向き合うだけでも緊張感が生まれるところに、開演数分前になると、演者たちがおもむろに入場して客席へと着いていく(空席がある場合のみの演出)。開演後しばらくして客席の演者が喋り出すと、観客と演者の境界も曖昧になる。もしかしたら、登場人物として自分が選ばれていた可能性もあるのではないか、と。そして、セットとなる机と椅子を並べていく演者たちの動きに、現実と劇との境界すら曖昧になる。こうなるともう、単なる傍観者として気楽に観ることは許されなくなる。さらに、リアルタイムに近く話が進むにつれ、密室での神経質な心理戦と、人格や設定の転覆が繰り返される中で、劇世界の現実の境界が失われていく。一度もハケることなく演じている側は当然のこと、観客側にも精神力の消耗を強いる。カーテンコールを迎えても、演者も観客も俄かに作品の世界から抜け出せず、何が真実で何が虚構なのかと混乱し、笑顔になることができないのももっともだ。ただ拍手する価値があることだけは確かに思え、手が動いた。
桐野の小説が子供の遊びをテーマにしているのは、幼少の頃、何らかの事情で体験できなかったそれらの遊びへの憧憬或いは楽しかった時代の淡い記憶が投影されているのかもしれず、同じように、登場人物たちも現実世界の桐野がなりたいもの、やってみたいものが投影されているのかもしれないと思った。しかし、桐野の性別や実像、本名は終幕しても依然として闇の中だ。
二面舞台の反対側から、登場人物たちの正体を既知のものとしてと、2回見ることにして正解。感動を呼ぶようなストーリーではなく、隠された真実が大きな鍵となる舞台でありながら、それが分かっていても劇世界にまんまと引き込まれ、分かっていればこそ見えてくる部分もあった。演劇の新鮮な醍醐味を味わわせてもらった気がする。劇中で登場人物たちが操るノートパソコンや携帯の画面までしっかりと作りこまれ、演者たちは実際にボードにメモをとり、地図に書き込みをする。そして観客は終演後は取り散らかった宴の後をまざまざと眺めることができ、それによってまたも曖昧な世界に引き戻される気分になる。そこまでも計算のうちなのかとすら思ってしまった。
頭の中で作り上げた登場人物たちを動かし、彼らの運命を握り、幸福にも破滅にも導くことを専らとする劇作家と呼ばれる職業の人であれば、おそらく、万能感を抱いたり、はたまた自らが作り出した登場人物への罪悪感を抱いたりする感覚にとらわれることもあるのではないかと想像する。この作品は、作者のそんな思いが投影されたものなのかもしれないと思った。
小説の主人公を演じたまぁこさんは、この舞台への出演が決まってから、膝に大きな怪我を負ってしまった。しかし、弱音や恨み言を一言も吐くことなく稽古に参加し、本番を迎え、これまでの役柄にはないような重要な役を演じ切り。無力さに打ちのめされながらも、理不尽な運命と必死に戦う水越の悔しさ、強さを、鋭い表情と涙で表現できるのは、彼女自身の芯の強さがあってこそ。この試練も、彼女なら人間として、女優としての成長の糧にしていけると信じられる。当面は治療に専念ということになるのかもしれないが、いつか華麗なアクションも見せてほしいもの。スーツ姿も、意外と言っては失礼だが、様になっていた。
まぁこさんとはこの半年で3回目の共演となる長橋さんは、コミュ障の引きこもりという設定からの瞬間の一撃での豹変ぶり。この前の作品は、違う組の方を観劇したので見られなかったが、そこでもボサボサ頭で自然を自在に操る女子高生という個性的な役を演じたという彼女。こういう癖のある危ない役を引き寄せられるというのも実力が認められている証拠。来月は、どんな顔を見せてくれるのだろうか。
水崎綾さんは、名作「冬椿」でのアカツキ・シノノメ姉妹以来、5年半ぶり。そのときの敵役のイメージがついてしまっていたが、今回はクールな外面ながら内面の暖かみも持つインテリ役で、こんなに綺麗な人だったのかと今更ながらに気づいたのだった。
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